アムリタ・シェール=ギル《若い娘たち》とは|パリで描いた19歳の出世作

《若い娘たち》(1932年)は、アムリタ・シェール=ギルが、パリのエコール・デ・ボザールに在学中、19歳で描いた油彩画です。肌の色も、姿勢も対照的な二人の若い女性が、室内で向かい合っています。この作品で、アムリタは翌1933年にパリのグラン・サロンの準会員に選ばれ、画家としての最初の大きな評価を得ました。

基本情報

作者はアムリタ・シェール=ギル(1913〜1941)、制作年は1932年6月で、パリで描かれました。技法は油彩・カンヴァスで、サイズは縦164×横133cmです。所蔵はインド政府で、ニューデリーの国立近代美術館が保管しています。署名は、画面の左下に、赤い文字で入っているように見えます。

制作背景|パリで描いた大作

アムリタは、1929年、16歳でパリに渡り、グランド・ショーミエール美術学校を経て、エコール・デ・ボザールで学びました。1930年から1932年にかけて、パリで60点以上の油彩を描いたとされ、自画像、友人や家族の肖像、裸体などが多くを占めます。

《若い娘たち》は、1932年の夏に、学校の年末の審査に出した6点の一つです。この審査では、外国人としての扱いで、2等の評価を受けています。翌1933年には、サロンに入選し、金賞を受け、準会員の資格を得ました。準会員は、審査を経ずに、毎年2点の作品を出品できる資格です。アジア人として、金賞を受けたのも、初めてとされています。

見どころ|対照的な二人の女性

画面は、二人の若い女性が、椅子に腰かけ、向かい合う構図です。左の女性は、暗い髪を後ろにまとめ、赤い袖の濃緑のドレスに、緑の首飾りをつけ、背筋を伸ばして座っています。膝の上には、皿にのせたさくらんぼがあります。脚を組み、赤い靴をはいた足は、きちんと揃っています。モデルは、アムリタの妹のインディラです。

右の女性は、明るい肌に、赤みを帯びた長い金髪の持ち主で、胸の片方をあらわにして、椅子に深くもたれています。髪が、その胸の一部を覆っています。足は、片方が裸足です。手には、櫛のようなものを持ち、視線を落としています。モデルは、アムリタの友人のドニーズ・プルトーでした。

二人は互いに向き合い、会話をしているように見えます。左の女性は、口元にかすかな笑みを浮かべ、右の女性を見つめています。背筋の伸びた姿勢と、くつろいだ姿勢。暗い肌と、明るい肌。その対照が、画面の中心にあります。

見どころ|暗い室内と、色の響き

背景は、半分開いた戸棚のある、暗く落ち着いた室内です。茶、赤褐色、深い緑が、画面の大部分を占めています。そのなかで、右の女性の、淡いレースのスカートと、肌の明るさが、浮かび上がります。右下の小さな卓には、茶器と花が置かれています。

厚みのある絵具と、陰影を強調した色づかいは、パリで学んだ、西洋の絵画の伝統に近いものです。アムリタは、のちに、この時期の自分の作品は、構想も技法も、完全に西洋的だったが、決しておとなしく、型どおりではなかった、と語っています。

評価とエピソード

1933年のパリでは、この作品は、その年の絵のひとつに数えられたと伝えられます。アムリタは、友人でのちに夫となる従兄ヴィクトルに宛てた手紙のなかで、教師の一人が、自分をクールベにたとえたことに対し、「私は私自身になる」と答えたと書いています。

一方で、アムリタ自身は、この作品を、それほど高く評価していませんでした。同じ時期に描いた《プロフェッショナル・モデル》のほうが、はるかに優れていると考えていたようです。

1935年9月、インドのシムラで開かれた美術展には、この作品が、《会話》という題で出品されました。審査員から、ファリドコット侯の賞を与えられましたが、彼女は、自分の最良の作品が理解されていないと感じ、受賞を辞退しました。

二人は何を表すのか

この絵については、さまざまな解釈があります。キュレーターのカタリン・ケシェリュは、「東と西の出会い」を見ています。伝記作家のヤショーダラ・ダルミアは、二人の女性が、アムリタ自身の異なる側面を表している可能性を指摘しています。また、暗い肌の女性が、背筋を伸ばした姿勢で、くつろいだ白い肌の女性と、対等な立場にあることに、注目しています。

美術史家のサローニ・マトゥールは、ヴィヴァン・スンダラムの見方に賛同して、この絵を複雑な作品とし、二人を恋人と読む可能性と、人種的に分かれた自分自身の自画像と読む可能性を挙げています。

のちの《二人の少女》(1939年)で、暗い肌と、明るい肌の女性の対等な関係という主題は、さらに展開されます。

作品のその後

アムリタの作品は、インドの古美術・美術品保護法(1972年)にもとづき、インドの宝として扱われ、インド国内で売買される場合は、国外に出せないものとされています。インド考古調査局は、1976年と1979年に、彼女の作品を、この対象に指定しました。《若い娘たち》は、国立近代美術館に所蔵されており、国外に出ることはありません。

まとめ

《若い娘たち》は、19歳のアムリタが、パリで学んだ技法をもとに、二人の若い女性の対照を描いた作品です。のちにインドで、独自の画風へと進む画家の、出発点に位置しています。そこに描かれた、二人の関係の曖昧さと緊張感は、見る者に、今もさまざまな読み方を促します。

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