《赤ん坊のお祝い!》(1903年)は、アンリ・ルソーが描いた子どもの肖像画で、スイスのヴィンタートゥール美術館が所蔵しています。巻き毛の金髪の子どもが、芝生の上に立ち、片手に鮮やかな衣装の操り人形を、もう片方の手には、花束を入れた服の裾を握っています。体は大きく、顔は真剣で、見る者を強い目でとらえます。一度見たら忘れない、ルソーの子どもの肖像の代表作です。
基本情報
作者はアンリ・ルソー(1844〜1910)、制作年は1903年です。技法はキャンバスに描いた油彩で、サイズは縦100×横81cm。ヴィンタートゥール美術館(収蔵番号KV 1103)に所蔵されています。画面の右下には、「Henri Rousseau」と署名があります。原題は「Pour fêter le bébé!」で、英語では、「To Celebrate the Baby」や「Child with Puppet(人形を持つ子ども)」と呼ばれます。日本語では、《子供と操り人形》と紹介されることもあります。
見どころ|子どもの姿

画面の中央に、金色の巻き毛の子どもが、まっすぐ立っています。丸い顔と、茶色の大きな目、小さな赤い口。表情は、子どもらしいあどけなさよりも、真剣な、大人びたものです。個人の鑑賞記事は、男女の区別がつかないと述べています。
体には、白い、半袖の簡素な服を着て、太い腕と脚が、画面の中央に、どっしりと見えます。片方の手は、服の裾を持ち上げて、そこに、小さな花束を入れています。花束には、白いヒナギクや、赤い花、黄色い花が見えます。足もとは、黒い編み上げの靴で、草の中に、まるで埋まるように立っています。
見どころ|操り人形
子どもは、もう片方の腕を、横に伸ばして、紐でつるした、操り人形を持っています。人形は、赤、黄、緑、青、ピンクの派手な衣装を着た道化師で、頭には、羽根飾りのついた、円錐形の帽子をかぶり、黒い口髭を生やしています。この人形の顔も、愛らしさとは遠い、年配の男の顔です。
ある紹介記事は、ルソーが、子どもらしい愛らしさを描かず、子どもの真剣な顔と、人形の奇妙な顔を、対にして描いていると述べています。
見どころ|緑の背景
子どもの背後には、太い木の幹があり、羽状の葉をつけた枝が、画面の上へ広がっています。左には、丸い樹形の木が見え、遠景には、細長い糸杉のような木と、橙色に色づいた木々が、並んでいます。地面は、濃い緑の芝生で、小さな白い花や、赤い花が、点々と咲いています。空は、青緑色で、雲はありません。
個人の鑑賞記事は、足もとの草や、白や赤の花びらが、丁寧に描かれ、木の葉も、裏表で緑の濃淡が描き分けられていると述べ、構図の完成度が高いと評価しています。
日本での紹介
この絵は、2010年に日本で巡回した「ザ・コレクション・ヴィンタートゥール」展(兵庫県立美術館、世田谷美術館など)で、ヴィンタートゥール美術館のコレクションが、初めて日本で紹介された際の、目玉の一つとして展示されました。
ルソーの子どもの肖像
ルソーは、子どもの肖像を、いくつか描いています。《人形を抱く子供》(オランジュリー美術館)などは、同じように、大きな体と、真剣な顔の子どもを描いたものです。ある紹介記事は、ルソー自身が、5人の子のうち、4人を、病気などで早く亡くしたと述べ、一部の子どもの肖像が、追悼ではないかという説もあるが、真意は謎のままだとしています。
まとめ
《赤ん坊のお祝い!》は、赤ん坊のお祝いという題とは裏腹に、静かで、少し不穏な空気をたたえた作品です。花束と人形を持つ子どもの、まっすぐな視線。その不思議な存在感が、緑の庭の静けさのなかで、いっそう際立っています。
