サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館に、白いドレスをまとった女性が、花咲く庭にひとり佇む様子を描いた油彩画がある。《庭の女(仏:Femme au jardin)》と題されたこの作品は、クロード・モネが1866年から1867年にかけて手がけたもので、当時26歳だった彼が、まだ後年の印象派とは異なる、より構成的な画風で仕上げた1枚だ。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作者 | クロード・モネ(1840〜1926) |
| 制作年 | 1866〜1867年 |
| 技法・素材 | 油彩・カンヴァス |
| サイズ | 82×101cm |
| 所蔵 | エルミタージュ美術館(サンクトペテルブルク) |
従兄の別荘の庭で描かれた1枚
モネは幼少期をル・アーヴルで過ごし、その後もたびたびこの地の親族のもとを訪れていた。本作が描かれたのは、裕福な従兄ポール=ウジェーヌ・ルカードルが、ル・アーヴル近郊サント=アドレスに所有していた別荘「ル・コトー」の庭だ。1866年から67年の夏、モネはここに滞在し、屋外で直接自然と向き合いながら、複数の庭の風景画を手がけている。本作はそのなかでも中心的な位置を占める作品とされる。なおX線調査により、このカンヴァスには実は別の絵がすでに描かれていたことが明らかになっている。
モデルはいとこの若妻
画面に描かれた女性は、従兄ルカードルの若い妻、ジャンヌ=マルグリット・ルカードルだ。当時流行していた装いに身を包んだ彼女の姿は、単独の人物像として描かれることで、この庭の情景にどこか物悲しい、詩情めいた雰囲気を添えている。
見どころ

白いドレスと赤い花壇の対比
女性がまとう明るい白のドレスは、周囲を彩る赤やピンク、緑の色彩と鮮やかな対比をなしている。この光を受けて輝く白が、画面全体の構成を引き締める重要な役割を果たしている。
均等な間隔で配置された3つの要素
本作の構図は、女性の姿、中央に立つ白い花をつけた木とその下に広がる赤い花壇、そして右手の黄色い花をつけた木という、3つの主要な要素がほぼ等間隔に配置されることで組み立てられている。それぞれの影の落ち方までも、この構成の一部として計算されている。
後年の印象派とは異なる緻密な描写
本作の画風は、モネが後に確立することになる、より自由で速い筆致の印象派様式とは異なり、緻密で構成的な性格を持っている。とはいえ、屋外で直接自然の光と向き合おうとするその姿勢には、すでに彼の生涯を貫くことになる関心の芽が明確に表れている。
実際に見るには
本作はサンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館に所蔵されている。パリのオルセー美術館には、同じくサント=アドレスでの経験を踏まえながら、より大画面に4人の女性を描いた関連作《庭の女たち》も所蔵されており、あわせて見ることで、モネがこの時期に庭という主題をどのように発展させていったかがうかがえる。
FAQ
Q. 《庭の女》はどこで見られますか?
サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館に所蔵されている。
Q. モデルは誰ですか?
モネの従兄ポール=ウジェーヌ・ルカードルの妻、ジャンヌ=マルグリット・ルカードルである。
Q. この絵はどこで描かれましたか?
ル・アーヴル近郊サント=アドレスにあった、ルカードル家の別荘「ル・コトー」の庭で制作された。
Q. なぜこの絵は後年のモネの作風と違って見えるのですか?
まだ確立されていなかった印象派様式以前の、より構成的で緻密な描写が用いられているためである。
Q. オルセー美術館の《庭の女たち》とはどんな関係がありますか?
同じサント=アドレスでの経験をもとにした関連作で、本作より大きな画面に4人の女性が描かれている。
まとめ
《庭の女》は、後年の自由奔放な筆致とは異なる、緻密な計算のもとに組み立てられた1枚だ。白いドレスと赤い花壇の対比を見つめていると、まだ26歳だったモネが、光と色彩の関係をどれほど注意深く観察し始めていたかが伝わってくる。
