名古屋市美術館に、おさげ髪を編んだ少女がまっすぐにこちらを見つめる肖像画がある。《おさげ髪の少女(英:Girl with Pigtails)》と題されたこの絵は、イタリア出身の画家アメデオ・モディリアーニが1918年頃、南フランス滞在中に手がけたものだ。彼が世を去るわずか1年ほど前、人生のある大きな出来事と重なる時期に描かれている。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作者 | アメデオ・モディリアーニ(1884〜1920) |
| 制作年 | 1918年頃 |
| 技法・素材 | 油彩・カンヴァス |
| サイズ | 60.1×45.4cm |
| 所蔵 | 名古屋市美術館 |
パリの喧騒を逃れた南仏で
第一次世界大戦下のパリの混乱を逃れ、モディリアーニは南フランスへ移り住んだ。ちょうどこの時期、彼のパートナーであったジャンヌ・エビュテルヌとのあいだに娘が生まれ、彼は初めて父親となっている。この父になった喜びが影響したのか、モディリアーニはこの時期、子どもをモデルにした肖像画を数多く手がけており、本作もそのうちの代表的な1枚に数えられている。
モディリアーニは1915年から1920年にかけて、300点を超える肖像画を残したとされる多作の画家だった。彼は普段「形態」を重視する画家として知られていたが、この時期に描かれた子どもたちの肖像には、いつも以上に率直な感情がにじみ出ているとも評されている。何も求めず、ただ澄んだ瞳でこちらを見つめる少女の姿には、報われることの少なかった彼自身の人生のなかで、それでも優しさや愛情を求め続けずにはいられなかった画家の心情が重ねられているのではないかとも指摘されている。
見どころ

アーモンド形の瞳と細長い輪郭
少女の顔は、モディリアーニ特有の引き伸ばされた輪郭と、アーモンド形の瞳によって描かれている。この様式化された顔立ちは、アフリカの仮面彫刻からの影響を色濃く受け継いだ、彼を象徴する表現だ。
傾いた肩が生む溶けるような印象
少女の肩は、なだらかに傾斜するように描かれており、これが全体の引き伸ばされた印象をいっそう強めている。まるで少女の輪郭が周囲に溶け込んでいくような、独特の柔らかさが生まれている。
サーモンピンクの衣と紅潮した頬
少女がまとう鮮やかなサーモンピンクの服と、赤みを帯びた頬が、彼女の少女らしい生命力を静かに主張している。モディリアーニがしばしば手がけた大人の女性像とは異なる、幼さゆえの初々しさがここに表れている。
髪を結ぶ飾りの控えめなアクセント
頭部の左側には、髪を結うための小さな飾りが添えられている。この細部が、簡素な構図のなかにささやかな装飾性を持ち込み、モデルとなった少女の個性を静かに際立たせている。
実際に見るには
本作は名古屋市美術館の常設コレクションに含まれている。モディリアーニが同時期に手がけた他の子どもの肖像画とあわせて見ることで、父となった彼がこの時期に何を見つめていたのかがうかがえる。
FAQ
Q. 《おさげ髪の少女》はどこで見られますか?
名古屋市美術館に所蔵されている。
Q. この絵はいつ、どこで描かれましたか?
1918年頃、モディリアーニが南フランスに滞在していた時期に制作された。
Q. なぜこの時期に子どもの肖像が多いのですか?
パートナーのジャンヌ・エビュテルヌとのあいだに娘が生まれ、父親になったことが影響しているのではないかと考えられている。
Q. モデルの少女は誰ですか?
特定の人物名は伝わっていない。
Q. モディリアーニはどんな画家でしたか?
イタリア出身でパリを拠点に活動し、引き伸ばされた輪郭と仮面のような顔立ちを特徴とする独自の肖像画様式を築いた画家である。
まとめ
《おさげ髪の少女》は、パリの混乱を離れ、父になったばかりのモディリアーニが、子どもという主題に静かに向き合った1枚だ。何も語らず、ただ澄んだ瞳でこちらを見つめる少女の表情に、彼がこの時期だけ見せた率直さが宿っている。
