《マルセル・ルーランの肖像》(1888年12月)は、フィンセント・ファン・ゴッホによる油彩画で、生後4か月の赤ん坊マルセル・ルーランを描いた作品です。この構図は少なくとも3点のバージョンが現存し、それぞれゴッホ美術館、ワシントン・ナショナル・ギャラリー、ソシンデック財団に所蔵されています。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作者 | フィンセント・ファン・ゴッホ(1853〜1890) |
| 制作年 | 1888年12月 |
| 技法・素材 | 油彩・カンヴァス |
| サイズ | 約34〜35×23〜24.5cm(バージョンにより若干異なる) |
| 制作地 | フランス・アルル |
| 所蔵 | ゴッホ美術館、ワシントン・ナショナル・ギャラリー、ソシンデック財団に各1点 |
| モデル | マルセル・ルーラン(生後4か月) |
一言でいうと
《マルセル・ルーランの肖像》は、アルルで親交を深めた郵便局員一家の末娘を、丸々とした顔立ちと元気な眼差しとともに描くことで、ゴッホの子供への深い愛情がにじみ出た作品である。
制作背景
1888年2月にアルルへ到着したゴッホは、まもなく居酒屋でジョゼフ・ルーランと知り合います。ジョゼフは駅の郵便物取扱係でしたが、ゴッホは手紙の中で彼を「郵便配達人」だと思い込んでいました。ゴッホより12歳年上のジョゼフは、ゴッホが住む黄色い家から徒歩5分ほどの場所に一家で暮らしており、次第に親しい友人関係を築いていきます。1888年11月末から12月初め、ゴーギャンとの共同生活の最中、ついにルーラン夫妻と子供たちがモデルを務めることになり、この一連の肖像画が生まれました。
見どころ

構図:白い縁取りのある帽子をかぶった赤ん坊が、正面を見つめる構図で描かれています。丸みを帯びた頬と、大きく見開かれた青い瞳が印象的です。
技法:緑を基調とした背景と、赤ん坊の肌に施された黄・緑・紫・紅といった様々な色調の組み合わせは、同時期に手がけられたジョゼフ・ルーランの肖像画にも通じる、ゴッホ特有の色彩技法です。
評価と影響
ゴッホはルーラン一家をモデルに、ジョゼフ本人、妻オーガスティン(「ゆりかごを揺らす女」としても知られる)、長男アルマン、次男カミーユ、そして末娘マルセルと、家族全員の肖像を手がけました。耳切り事件の後もルーラン一家はゴッホとの交流を絶やさなかったと伝えられており、この一連の肖像画群は、ゴッホがアルルで築いた数少ない温かな人間関係を今に伝えています。
よくある誤解
誤解①「《マルセル・ルーランの肖像》は1点しか存在しない」→ 実際は少なくとも3点のバージョンがある
単一の作品だと思われがちですが、実際にはゴッホ美術館、ワシントン・ナショナル・ギャラリー、ソシンデック財団に、それぞれよく似た構図の作品が1点ずつ所蔵されています。
誤解②「ジョゼフ・ルーランは郵便配達人だった」→ 実際は駅の郵便物取扱係だった
ゴッホ自身が手紙でそう呼んでいたことから広く「郵便配達人」として知られていますが、実際にはアルル駅で郵便物の管理を担当する職員でした。
FAQ
Q. 《マルセル・ルーランの肖像》とはどんな作品ですか?
A. ゴッホが1888年12月、アルルで親交のあったルーラン家の末娘マルセル(生後4か月)を描いた油彩画です。
Q. なぜ複数のバージョンが存在するのですか?
A. ゴッホが同じ構図を繰り返し描いたためで、明確な理由は伝えられていませんが、彼はルーラン一家の肖像画をたびたび模写・再制作しています。
Q. 《マルセル・ルーランの肖像》はどこで見られますか?
A. ゴッホ美術館(アムステルダム)、ワシントン・ナショナル・ギャラリー、ソシンデック財団に、それぞれバージョンが所蔵されています。
まとめ
《マルセル・ルーランの肖像》は、アルルで親交を深めた郵便局員一家の末娘を、丸々とした顔立ちと元気な眼差しとともに描くことで、ゴッホの子供への深い愛情がにじみ出た作品です。ゴーギャンとの共同生活が破局を迎え、耳を切り落とすという事件に至る、あの嵐のような日々のすぐそばで、ゴッホはこの赤ん坊の絵筆を握っていました。
