アムリタ・シェール=ギル《自画像》(1931年)とは|黄色いベレー帽をかぶり、横を向く18歳の画家

《自画像》(1931年)は、アムリタ・シェール=ギルが、パリで学んでいたころに描いた、横顔の自画像です。黄色いベレー帽をかぶった若い女性が、卓の上に片腕を置き、画面の左のほうを見ています。赤い口紅と、青緑の服、青灰色の背景が、落ち着いた色調のなかで、くっきりと浮かび上がります。2015年に、ロンドンの競売で、約170万ポンドで落札されたことでも知られます。

基本情報

作者はアムリタ・シェール=ギル(1913〜1941)、制作年は1931年です。技法はキャンバスに描いた油彩で、サイズは、縦65.1×横54cm(英語版ウィキペディアの記載)です。画面の左下には、「A. SHER-GIL / 1931」の署名と年号があります。原題は、「Untitled (Self-Portrait)」で、題のない作品として、競売に出されました。現在の所蔵先は、確認できていません。

制作の背景|パリの学生時代

シェール=ギルは、ハンガリー人の母と、インドのシク教徒の貴族の父のあいだに、1913年にブダペストで生まれ、1929年に、パリへ移りました。英語版ウィキペディアによれば、彼女は、1930年から1934年のあいだに、ヨーロッパで、19点の自画像を描いており、そのうちの1点が、この作品です。この年(1931年)には、婚約していたユスフ・アリ・カーンの肖像や、のちに結婚する従兄弟ヴィクトル・イーガンの肖像も、描いています。

個人サイトの紹介によると、シェール=ギルは、この年、パリの美術学校(エコール・デ・ボザール)で、学んでいたとされます(原典は、確認できていません)。

見どころ|横顔と色

画面の中央には、横顔の若い女性が、体を、やや前に傾けて座っています。黒い髪は、黄色の、ふっくらしたベレー帽に、すっぽりと収められています。顔は、細く、鼻筋は、まっすぐで、濃い眉の下の目は、遠くを見ています。唇は、強い赤で、塗られ、耳には、細い輪の耳飾りが、垂れています。

服は、襟元の大きく開いた、深い青緑色で、肩から袖にかけて、青灰色のゆったりした布が、重なっています。腕は、卓の上にもたれ、手の指は、軽く曲げられて、置かれています。卓の右端には、褐色の小さな鉢が、ひとつだけ、あります。背景は、青灰色の、斑点のような筆あとで、粗く塗られ、壁の模様か、布のようにも見えます。

人物の視線は、観る者から、外れています。個人サイトは、この点を、「見る者との交流を避けるように、視線をそらしている」と述べています。

競売での落札

この自画像は、シェール=ギルが、友人で、画家の、ボリス・タスリツキー(1911〜2005)に贈ったものです。サザビーズは、これを、「彼女の最もロマンチックな作品の一つ」と呼び、タスリツキーの家族のもとに、2015年まで、あったと述べています。2015年10月6日に、ロンドンのサザビーズの競売で、約170万ポンドで落札されました。

その前の2015年3月には、ニューヨークのサザビーズで、1933年の別の自画像が、約292万ドルで落札され、インドの女性画家として、最高額を記録していました。シェール=ギルの作品は、インドの国立近代美術館(NGMA)に、多くが収蔵されているため、競売に出ることは、まれです。

まとめ

《自画像》(1931年)は、18歳のシェール=ギルが、自分の姿を、色と筆づかいで、確かめるように描いた作品です。のちに、インドの農村や女性たちを、独自の視点で描くことになる画家の、パリでの若い日々の、静かで、率直な記録でもあります。

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