マネ《バラ色のくつ(ベルト・モリゾ)》とは|黒い服の足もとにのぞく、バラ色の靴

《バラ色のくつ(ベルト・モリゾ)》(1872年)は、エドゥアール・マネが、女性画家ベルト・モリゾを描いた全身像で、広島のひろしま美術館が所蔵しています。全身を黒の衣装で包んだ女性が、画面の中央に立ち、ドレスの裾から、右足のバラ色の靴だけが、のぞいています。素早い筆づかいで、背景の街の景色が、ぼんやりと溶け込む、軽やかな作品です。

基本情報

作者はエドゥアール・マネ(1832〜1883)、制作年は1872年です。技法はキャンバスに描いた油彩で、サイズは、ひろしま美術館の記録では、縦46.4×横32.5cmです。原題は、「La Femme au soulier rose (Berthe Morisot)」で、直訳すると、「バラ色の靴の女(ベルト・モリゾ)」です。ひろしま美術館が所蔵しています。画面の右側の中ほどには、「Manet」の署名が、小さく見えます。

モデル|ベルト・モリゾ

モデルのベルト・モリゾ(1841〜1895)は、印象派の画家のひとりとして活躍した女性画家で、1874年から開かれた印象派展に、全8回のうち7回、参加しました。モリゾは、1868年ごろにマネと知り合い、その後、何度も、マネのモデルを務めます。1874年には、マネの弟ウジェーヌ・マネと結婚しました。

英語版ウィキペディアによれば、マネは、1868年から1874年のあいだに、モリゾの肖像を12点描いています。そのなかで、1872年から1874年にかけて、黒い服のモリゾを描いた作品が、いくつかあります。『すみれの花束をつけたベルト・モリゾ』(オルセー美術館)、『扇子を持つベルト・モリゾ』(リール美術館、1874年)などです。この作品も、同じ時期のものとされ、「バラ色のくつ」と呼ばれる作品も、同年の作品です。

見どころ|黒と、一点の「バラ色」

ひろしま美術館は、この作品を、「全身黒ずくめの女性を描いた作品で、ドレスの裾から見える右足の『バラ色のくつ』だけがアクセントになっている」と紹介しています。

画面の中央に、細身の女性が、まっすぐに立っています。黒に近い、深い茶色の髪は、頭の上に結い上げられ、小さな赤い花か、飾りが、添えられています。ほつれた髪が、首のあたりに、かかっています。頬と唇は、薄い赤色で、胸元は、大きく開いた黒い衣装の中に、白い肌が見えます。衣装は、ゆったりとした長い黒の服で、袖の先は、細かく、ほつれているように見えます。両腕は、体の脇に垂れ、片手は、左の椅子のそばにあります。足もとには、ドレスの裾の下から、バラ色の靴の先が、小さく見えています。

左には、布をかけた椅子のようなものがあり、右には、赤茶色の太い柱か、枠が、立っています。背景は、青みがかった灰色で、遠くに、教会の尖塔のような形が、いくつかぼんやりと立ち、その手前に、壁のようなものも、見えます。床は、赤茶色の筆あとで、さっと塗られています。画面全体が、素早い筆づかいで描かれ、細部は、はっきりと描き込まれていません。

スペイン絵画の影響

ひろしま美術館の来館者のブログは、館内の解説で、この作品に、スペインのゴヤの影響があると紹介されていたと記しています。同美術館の画家の紹介文は、マネが、スペイン絵画や、日本の浮世絵の影響を受けて、革新的な作品を生み出したと述べており、黒を基調とした衣装は、そうした影響の一つの表れとも考えられます。(この点は、個人ブログの記述で、公式の解説ではありません。)

まとめ

《バラ色のくつ(ベルト・モリゾ)》は、黒とバラ色という、わずかな色の対比で、モデルの存在感を、際立たせた作品です。親しい友人であり、画家仲間でもあったモリゾを、マネは、飾らない姿で、さっと描き留めました。靴の先に宿る小さな色は、画面の静けさのなかで、ひとすじの輝きのように見えます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!