《M.ルル(ルイ・ル・レイ)》(1890年)は、ポール・ゴーギャンが、ブルターニュのル・プールデュで描いた、少年の肖像画です。白い大きな襟の服を着た少年が、桃色の椅子に座り、両手を膝の上で組んでいます。背後には、緑の丘と、橙色の空、丸い花房をつけた花が並びます。太い輪郭線と、平らな色面で構成された、ゴーギャンのブルターニュ時代の様式がよく表れた作品です。
基本情報
作者はポール・ゴーギャン(1848〜1903)、制作年は1890年です。技法はキャンバスに描いた油彩で、サイズは縦55.2×横46.3cm。アメリカ、ペンシルベニア州の、バーンズ財団(収蔵番号BF589)に所蔵されています。画面の左上には、署名と年号、そして、「à Mr Loulou / Souvenir」と読める献辞が、書き込まれています。
制作背景|ル・プールデュの友人の子
バーンズ財団は、1886年以降、ゴーギャンが、近代化の影響を受けていないと見えたブルターニュの景観と暮らしに惹かれ、しばしばル・プールデュで制作したと説明しています。モデルのルイ・ル・レイは、その土地の夫婦の息子で、夫婦は、ゴーギャンの友人でした。
ゴーギャンは、1889年10月から、翌1890年11月まで、ル・プールデュに滞在しました。宿屋に、画家仲間とともに滞在し、壁や扉に絵を描いたことが知られています。本作の「ルル」は、ルイの愛称と考えられ、献辞の「souvenir(思い出)」は、この少年への贈り物として描かれたことをうかがわせます。(この点は、画像の文字からの推測です。)
見どころ|少年と椅子

画面の中央では、赤みを帯びた茶色の髪を、肩まで伸ばした少年が、斜め左に目を向けています。顔は、淡い黄土色と桃色で塗られ、黒い目と、薄い赤の唇が、はっきりと描かれています。口元は固く閉じ、表情は、少し緊張しているようにも、物思いに沈んでいるようにも見えます。
少年は、濃い青の服に、白く波打つ大きな襟をつけています。襟の縁は、ぎざぎざの線で縁どられ、白い面が、画面の中心に、強い光のように置かれています。手は、膝の上で、軽く組まれています。
座っているのは、桃色と橙色の背もたれのある椅子で、椅子には、赤い実や、緑の蔓、紫の大きな花のような、植物の模様が描かれています。椅子の輪郭は、太い線で縁どられ、人物と同じように、平らに扱われています。
見どころ|背景の花と丘
背景は、手前の緑の丘と、その奥の、橙色の空で構成されています。右には、丸い、青紫や白の花房をつけた花が、細い茎の上に、いくつも立ち、左端にも、同じ花が見えます。花は、人物と椅子を、挟むように配置され、画面に、装飾的な広がりを与えています。
バーンズ財団は、人物、椅子、花の輪郭を縁どる太い線が、中世やビザンチンの七宝(クロワゾネ)に形が似ていることから、「クロワゾニスム」と呼ばれてきたと説明しています。
まとめ
《M.ルル》は、ゴーギャンが、友人の子のために描いた、小さな肖像画です。大人びた襟と、あどけない顔、鮮やかな色彩の椅子と花。そのとり合わせが、少年の存在を、親しみやすさと、どこか不思議な静けさとともに、伝えています。

