ゴーギャン《テ・レリオア(夢)》とは|眠る子と、見守る二人の女のいる部屋

《テ・レリオア(夢)》(1897年)は、ポール・ゴーギャンが、二度目のタヒチ滞在中に描いた、横長の油彩画です。彫刻で飾られた部屋の床に、眠る子を入れた揺りかごが置かれ、二人の女が、その子を見守っています。窓の外には、馬に乗った男が、遠くの小道を通っています。「テ・レリオア」とは、タヒチ語で「夢」を意味し、ゴーギャン自身が、この絵のなかでは、すべてが夢なのだと語っています。

基本情報

作者はポール・ゴーギャン(1848〜1903)、制作年は1897年です。技法はキャンバスに描いた油彩で、サイズは縦95.1×横130.2cm。ロンドンのコートールド・ギャラリー(収蔵番号P.1932.SC.164)に所蔵されています。サミュエル・コートールドの寄贈品(1932年)です。画面の下部中央には、「TE RERIOA / P.Gauguin 97 / TAITI」と、題、署名、年号、地名が書き込まれています。

制作背景|タヒチ滞在6年目

ゴーギャンは、1895年、再びタヒチへ渡りました。1897年には、病気と貧困が重なり、娘の死の知らせも届くなか、《ネヴァーモア》や、《我々はどこから来たのか》の制作に取り組んでいました。コートールド・ギャラリーは、本作が、《ネヴァーモア》のわずか数週間後に描かれたと説明しています。

ゴーギャンは、1897年3月12日付で、友人ダニエル・ド・モンフレーに宛てた手紙で、この絵について語っています。制作を急いだにもかかわらず、前の数点より良いと思う。題は「テ・レリオア」で、この絵のなかでは、すべてが夢だ。子供か、母親か、小道にいる馬に乗った男か、あるいは画家の夢なのか、という趣旨です。

題字については、タヒチ語の「夢」を、ゴーギャンが書き誤っており、正しくは、「rereioa」だとされています。

見どころ|彫刻に囲まれた部屋

画面の左の壁には、黄金色の人物像を彫った、大きな浮彫が掛けられています。その下には、桃色の小さな動物のような像が、並ぶ帯状の装飾があります。右の壁にも、同じような黄色の浮彫があり、立つ人物と、うずくまる動物が刻まれています。部屋の床は、淡い黄緑色で、中央には、色とりどりの模様の敷物が、斜めに敷かれています。

その上には、白い地に、橙色の斑点のある猫が、体を伸ばして、横たわっています。

手前の左には、暗い色の、彫刻を施した、揺りかごが置かれ、赤いリボンをつけた子が、眠っています。コートールド・ギャラリーは、二人の女が、この眠る子を見守っていると説明しています。

見どころ|二人の女

画面の右には、二人の女が、ほぼ並んで座っています。左の女は、水色のノースリーブに、緑の模様の腰布をまとい、横顔を見せています。視線は、揺りかごの子のほうへ、向けられているようです。右の女は、胸をあらわにし、白い布を腰に巻いて、足を組んで座っています。片手で顎を支え、こちらを向いて、静かに見つめています。

二人の背後には、四角い窓があり、その向こうに、緑の丘、青紫の山、椰子の木が見えます。丘の小道には、馬に乗った男が、小さく見えています。ゴーギャンが、手紙で触れた、「馬に乗った男」です。

揺りかごのモデル

ブリッジマン・イメージズの解説によると、ゴーギャンは、1895年に、二度目のタヒチへ向かう途中で、ニュージーランドに立ち寄りました。その2年後、ゴーギャンは、この絵に、木彫りの鉢の絵を取り入れ、それを、眠る赤ん坊の揺りかごに変えたとされます。

来歴

ゴーギャンは、この絵を、1897年に、パリの友人モンフレーに送りました。1900年には、モンフレーの旧友のカルメル医師のもと(ベジエ)に預けられ、1903年8月に、収集家のギュスターヴ・ファイエが、3,300フランで購入しました。ファイエの死後、息子のレオンが相続し、1928年11月に、画商のポール・ローゼンベルクが購入しました。1929年7月に、サミュエル・コートールドが、13,600ポンドで購入し、1932年に、コートールド美術研究所に寄贈しました。

コートールドは、この絵を、ゴーギャンの絵画のなかで、情緒的にも、強く惹かれていたようです。ゴーギャンの最大の作品、《我々はどこから来たのか》は、買わなかったと伝えられています。

日本での紹介

本作は、2019年に東京都美術館で開かれた「コートールド美術館展 魅惑の印象派」に出品されたとされ、同展では、《ネヴァーモア》とともに来日しました。ゴーギャンの住まいの内部を描いたものではないか、という噂が、かつて広まったとも伝えられます。

まとめ

《テ・レリオア》は、ゴーギャンが、現実と夢の境を、一つの部屋のなかに描き込んだ作品です。眠る子、見守る女、窓の外の騎手。どれが夢の主なのか、画家は、あえて、決めていません。南の島の静かな午後が、そのまま、一つの謎になっています。

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