パリの装飾美術館に、透き通る衣をまとった女性たちが、黒々とした森のなかを漂うように駆け抜ける水彩画がある。《3人の女と3匹の狼(仏:Trois Femmes et Trois Loups)》と題されたこの作品は、スイス出身のイラストレーター、ウジェーヌ・グラッセが1892年に手がけたものだ。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作者 | ウジェーヌ・グラッセ(1841〜1917) |
| 制作年 | 1892年 |
| 技法・素材 | 水彩・鉛筆・インク・紙 |
| 所蔵 | 装飾美術館(パリ) |
なお、今回参照した資料からは、この絵が特定の物語や文学作品に基づいて描かれたものかどうかまでは確認できなかった。以下では、作者と作品そのものについて確認できた情報を中心に紹介する。
アール・ヌーヴォーを準備した画家
グラッセはスイスに生まれ、パリを拠点に活動したイラストレーターであり画家だ。ベル・エポック期に花開いたアール・ヌーヴォー運動の一翼を担った人物として知られ、後の世代の画家たちに大きな影響を与えている。彼に師事したポール・ベルトンをはじめ、ポスター芸術を通じてグラッセの様式に触れたアルフォンス・ミュシャやルイ・リードといった画家たちも、その影響を色濃く受け継いでいる。
見どころ

風にたなびく透き通った衣
3人の女性は、まるで風になびいているかのような、透き通った薄布をまとって描かれている。この浮遊感のある衣の表現が、彼女たちが現実の存在ではなく、幽霊のような超自然的な存在であることを暗示している。
恐怖に見開かれた瞳
先頭を行く女性は、こちらを真っ直ぐに見つめている。その大きく見開かれた瞳と強張った表情が、背後から迫る何かへの恐怖を、鑑賞者に直接伝える役割を果たしている。
木々の陰から現れる3匹の黒い狼
画面下部には、木立の合間から顔をのぞかせる3匹の黒い狼が描かれている。手前の2匹はこちらをじっと見つめて座り、奥の1匹だけは体を起こして横を見やっている。この視線の向きの違いが、それぞれの狼に微妙に異なる緊張感を持たせている。
赤褐色に染まった森
背景の木々は、赤みを帯びた褐色で描かれ、装飾的な模様が幹に施されている。この温かみのある色調と、女性たちの冷たい青白い肌との対比が、画面全体に幻想的でありながらどこか不穏な雰囲気を与えている。
実際に見るには
本作はパリの装飾美術館に所蔵されている。グラッセが手がけたポスターや装飾芸術の作品群とあわせて見ることで、彼が線と色彩をどのように操り、後のアール・ヌーヴォー世代へとその様式を伝えていったかがうかがえる。
FAQ
Q. 《3人の女と3匹の狼》はどこで見られますか?
パリの装飾美術館に所蔵されている。
Q. この絵は特定の物語に基づいていますか?
今回参照した資料からは確認できなかった。
Q. グラッセはどんな画家でしたか?
スイス出身でパリを拠点に活動し、アール・ヌーヴォー運動に大きな影響を与えたイラストレーター兼画家である。
Q. なぜ女性たちは透き通って描かれているのですか?
明確な説明は伝わっていないが、幽霊や超自然的な存在を暗示する表現ではないかと考えられる。
まとめ
《3人の女と3匹の狼》は、物語の詳細が分からないまま、それでも見る者に強い緊張感を伝えてくる1枚だ。振り返る女性の見開かれた瞳と、木立の陰から光る狼の目だけで、これほどの恐怖が成立してしまうところに、グラッセの構成力の確かさが表れている。
