沈んだ気持ちを引きずる絵があれば、逆に、見ているだけで心が軽くなる絵もある。今回は、色彩の鮮やかさや、描かれた人々の躍動感から、元気をもらえる絵画を、10点集めてみた。
1. 《ダンス》マティス(1909〜10年)

真っ赤な人物が、緑の丘の上で、手をつないで輪になって踊る絵。細部をそぎ落とし、色彩と動きだけで喜びを表現したこの作品は、見ているだけで、自分もその輪の中に加わりたくなるような、開放感を放っている。

2. 《舟遊びをする人々の昼食》ルノワール(1880〜81年)

セーヌ川沿いのレストランで、友人たちが酒を酌み交わし、談笑する光景を描いた絵。暖かな日差しと、賑やかなおしゃべりが、画面越しにも伝わってくるようで、見る者まで、その場に招かれたような気持ちにさせる。

3. 《ひまわり》ゴッホ(1888年)

黄色一色で埋め尽くされた、力強い花瓶の花々。単純な静物画でありながら、そのエネルギッシュな筆致と色彩は、見る人に、生命力そのものを、そのまま手渡してくるかのようだ。

4. 《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会》ルノワール(1876年)

パリの野外ダンスホールで、若者たちが踊り、談笑する様子を描いた大作。木漏れ日が人々の肩や帽子に、まだらな光を落とす描写は、この絵に、実際にその場にいるかのような、活気を与えている。

5. 《生きる喜び》マティス(1905〜06年)
その名の通り「生きる喜び」を主題にした絵。裸の人々が、野原で踊り、寝そべり、笛を吹く様子が、鮮やかな色彩の中に、伸びやかに描かれている。タイトルに偽りのない、幸福感に満ちた一枚。
6. 《誕生日》シャガール(1915年)
婚約者ベラとの幸福な日々を描いた絵。宙に浮かびながらキスを交わす2人の姿は、現実には起こりえない光景でありながら、恋する喜びというものを、これ以上ないほど率直に表現している。
7. 《夜のカフェテラス》ゴッホ(1888年)

星空の下、黄色い光に照らされたカフェのテラスを描いた絵。夜という、本来なら静かで落ち着いた時間帯を、これほど明るく、心弾む色彩で描いた例は珍しく、夜更かしがしたくなるような、不思議な高揚感がある。

8. 《大きな水しぶき》デイヴィッド・ホックニー(1967年)
カリフォルニアのプールに、誰かが飛び込んだ瞬間の水しぶきを描いた絵。人物は画面に映っていないが、抜けるような青空と、乾いた太陽の光が、見る人に、夏の解放感を思い出させる。
9. 《黄・赤・青》カンディンスキー(1925年)
具体的な対象を持たない、色と形だけの抽象画。黄色や赤といった暖色が、画面いっぱいに弾けるように配置されており、理屈抜きに、見ているだけで気分が明るくなる、色彩の実験作である。
10. 《夢》アンリ・ルソー(1910年)

ソファに横たわる女性の周りを、色鮮やかなジャングルの植物と、動物たちが取り囲む、幻想的な絵。現実にはありえない組み合わせでありながら、その大胆な色使いと、のびのびとした構図が、見る人を、日常から解き放ってくれる。

よくある誤解
誤解①明るい色彩の絵は、画家自身も幸福な状態で描いたものだと限らない
《ひまわり》や《夜のカフェテラス》を描いたゴッホは、生涯を通じて、精神的な苦しみと闘い続けていた。それでも、彼が生み出した色彩そのものは、今日、多くの人に力を与え続けている。絵の明るさと、画家の人生の明るさとは、必ずしも一致しない。
誤解②抽象画は、具体的な人物や物語がない分、感情を揺さぶる力が弱い
カンディンスキーの《黄・赤・青》のように、具体的な対象を持たない絵であっても、色と形の組み合わせだけで、見る人の気分を、明確に動かすことができる。むしろ、具体的な物語がない分、色彩の力そのものが、より直接的に伝わってくるとも言える。
まとめ
元気になる絵に共通しているのは、鮮やかな色彩と、そこに描かれた人々の、屈託のない動きだ。難しい背景や、悲劇的な逸話を知らなくても、ただ眺めているだけで、気分が上向く。そういう絵が、美術史の中には、確かに存在している。
