《聖フランチェスコと聖ラウレンティウスのいる降誕》とは|消えたカラヴァッジョを徹底解説

《聖フランチェスコと聖ラウレンティウスのいる降誕》は、イタリアの画家カラヴァッジョが1600年に手がけた油彩画で、もともとイタリア・パレルモの聖ロレンツォ礼拝堂に飾られていました。幼子イエスの誕生を描いたこの大作は、1969年に忽然と姿を消し、世界の美術品盗難史上でも屈指の未解決事件として今日まで語り継がれています。この記事では、この絵がどのような場面を描いているのか、そしてなぜマフィアの関与が疑われ続けているのかを見ていきます。

目次

《聖フランチェスコと聖ラウレンティウスのいる降誕》とは — 基本情報

項目内容
作者ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ(1571〜1610)
制作年1600年
技法・素材油彩・カンヴァス
サイズ268×197cm
本来の所蔵先聖ロレンツォ礼拝堂(パレルモ、イタリア)
現状1969年に盗難、現在も行方不明

一言でいうと

《聖フランチェスコと聖ラウレンティウスのいる降誕》は、幼子イエスの誕生という穏やかな主題を、カラヴァッジョ特有の劇的な明暗によって描いた作品でありながら、1969年の盗難以来、今なお本物の行方が分かっていない一枚です。市場での評価額は3000万ユーロ(日本円で約36億円)にも及ぶとされています。

制作背景 — なぜこの絵は生まれたのか

パレルモの礼拝堂のために

本作は、パレルモにある聖フランチェスコ会の信心会のために、聖ロレンツォ礼拝堂を飾る目的で制作されました。カラヴァッジョがローマを離れる以前、その画業が円熟期を迎えつつあった時期の作品であり、劇的な明暗表現と親密な人間描写が高い水準で結びついた一枚として高く評価されてきました。

見どころ徹底解説

地面に横たわる幼子イエス

画面手前には、藁の上に横たわる幼子イエスの姿が描かれています。聖母マリアはその傍らでイエスを見下ろし、聖ヨセフは後ろ姿でうずくまるように寄り添っています。カラヴァッジョは聖なる場面をあえて質素な、地に足のついた情景として描き出しており、この飾らない親密さが本作の大きな魅力になっています。

舞い降りる天使の言葉

画面上部には、翼を広げた天使が舞い降り、「いと高きところには栄光、神にあれ(Gloria in excelsis Deo)」と記された帯を掲げています。この文言はキリストの降誕を告げる聖書の言葉であり、地上の静かな場面と、天上からの祝福とを一つの画面のなかで結びつける役割を果たしています。

祈る聖フランチェスコと聖ラウレンティウス

画面右側には、この礼拝堂の守護聖人である聖フランチェスコが跪いて祈りを捧げる姿が描かれ、その傍らには聖ラウレンティウスや羊飼いの姿も見られます。特定の礼拝堂に捧げられた作品らしく、その場を守る聖人たちが場面のなかに組み込まれている点も、本作の特徴の一つです。

事件 — 1969年の盗難とマフィアの影

忽然と消えた名画

1969年10月、本作はパレルモの聖ロレンツォ礼拝堂から何者かによって盗み出されました。この事件は世界の美術品盗難史上でも特に重大なものの一つとされ、今日に至るまで解決していません。捜査当局は、盗難後の数十年間、本作がシチリアのマフィアの手に渡り、取引の材料として使われてきた可能性が高いと考えています。

マフィア関係者による相反する証言

長年にわたり、複数のマフィア関係者や司法取引に応じた元構成員たちが、本作の運命についてさまざまな証言を残してきました。盗難後まもなく不適切な保管によって傷み、ネズミにかじられるなどして破損してしまったとする説がある一方、複数のマフィア一族のあいだで転売され、当局との交渉における一種の「威信を示す担保」として扱われてきたとする説もあります。50年以上を経てもなお、確定的な結論は出ていません。

映画化された事件

この未解決事件は、監督ロベルト・アンドーによって映画『盗まれたカラヴァッジョ』として映像化されています。事件の映画化を進めていた脚本家が何者かに誘拐されるというサスペンス仕立てのストーリーを通じて、マフィアの関与という大胆な推理を描き出した作品で、ヴェネツィア国際映画祭でも高く評価されました。

現在の礼拝堂の様子

盗難から半世紀近くを経た2015年、聖ロレンツォ礼拝堂には、現存する最良の写真資料をもとに制作された原寸大の複製画が掛けられました。本物が戻ってこない現実を静かに物語るこの複製は、訪れる人々にかけがえのない喪失を思い起こさせる存在になっています。

よくある誤解

本作はしばしば「単なる紛失した宗教画」として語られがちですが、実際には世界の美術品盗難史上でも屈指の未解決事件として扱われ、シチリアマフィアの関与が強く疑われ続けています。証言のたびに本作の運命についての説が食い違っており、確定的な真相はいまだ明らかになっていないことを踏まえて理解する必要があります。

FAQ

Q. この絵はいつ、どこから盗まれましたか?
1969年10月、イタリア・パレルモの聖ロレンツォ礼拝堂から盗まれました。

Q. 犯人は分かっているのですか?
シチリアのマフィアの関与が強く疑われていますが、事件は今日まで未解決のままです。

Q. 絵は今どうなっていると考えられていますか?
不適切な保管で破損したとする説と、マフィアのあいだで転売され続けているとする説があり、確定的な結論は出ていません。

Q. 現在礼拝堂には何が飾られていますか?
2015年に制作された原寸大の複製画が飾られています。

Q. この事件を題材にした作品はありますか?
監督ロベルト・アンドーによる映画『盗まれたカラヴァッジョ』が、この未解決事件を題材にしています。

まとめ

《聖フランチェスコと聖ラウレンティウスのいる降誕》は、カラヴァッジョの円熟期を物語る傑作でありながら、1969年の盗難以来、半世紀以上にわたって行方が分からないままの作品です。マフィアをめぐる相反する証言が今も交錯し続けていること自体が、この絵が抱える謎の深さを表しています。

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