《墓掘り人夫の死》は、スイスの象徴主義の画家カルロス・シュヴァーベが、1895年に着想し、1900年に水彩で仕上げた作品です。雪の積もった墓地で、墓穴を掘る老人のもとへ、黒い大きな翼を持つ女の姿の「死」が降り立ち、その訪れを知らせています。静かな冬の光景のなかに、死の訪れを避けられないものとして描いた、世紀末象徴主義の代表作の一つです。
基本情報
作者はカルロス・シュヴァーベ(1866〜1926)です。制作は、1895年に着想され、1900年に水彩で完成したとされ、画面の右下には、「’95 Carlos Schwabe, aquarellé en 1900(1900年に水彩で彩色)」という署名があります。技法は、黒鉛(鉛筆)、水彩、グワッシュ、植物性ガムのハイライトで、紙に描かれています。サイズは、オルセー美術館の記録で縦78×横56.5cm、ルーヴル美術館とRMNの記録で縦76×横56cmです。1902年に、ジョルジュ・ミショニスの遺贈で、国の所蔵となり、現在は、ルーヴル美術館の素描・版画部門に保管されています(オルセー美術館のコレクション、収蔵番号RF 40162 bis)。原題は、「La Mort du fossoyeur」または「La Mort et le fossoyeur」です。
作者について
カルロス・シュヴァーベは、1866年に、ドイツのアルトナで生まれ、スイスのジュネーヴで美術を学んだ、象徴主義の画家です。のちに、パリへ移り、象徴主義の文学者たちのサークルで活動しました。ゾラの『夢』、ボードレールの『悪の華』などの挿絵でも知られます。
見どころ|雪と柳と墓地

画面の背景には、雪をかぶった墓地が広がり、墓石が、白い雪のなかに、並んでいます。画面の上から、細い柳の枝が、何本も垂れ下がり、画面全体を、縦の線で覆っています。足もとには、白い花(スノードロップのように見えます)が、雪の縁に咲いています。
見どころ|墓穴の老人
画面の下では、白い髭を蓄えた老人が、掘りかけの墓穴のなかで、上を見上げています。彼は、片手で胸をつかみ、もう片方の腕は、墓穴の縁に伸びて、杖か、鋤のようなものに触れています。
エクレクティック・ライトは、この老人を、雪の降る冬の日に、自分の仕事に深く没頭していた墓掘り人夫と説明しています。老人は、自分のために、墓穴を掘っていたとも読める構図です。
見どころ|黒い翼の死
画面の上半分には、濃い青緑の長い衣をまとい、黒い大きな翼を広げた女が、墓穴の縁の土の上に、足を曲げて、座っています。頭には、細い帯を巻き、黒い髪を整え、目を伏せています。片方の手は、頭の上へ高く上げられ、もう片方の手には、淡い緑の光が灯っているように見えます。素足は、雪の混じる土に触れています。
翼の長い羽根の先は、画面を斜めに横切って、老人のそばまで届いています。死が、老人と、この世を、一枚の影でつないでいるようにも見えます。
主題
画像データベースは、この作品に、「ヴァニタス」「メメント・モリ」「儚さ」などの主題の語を付けています。エクレクティック・ライトは、シュヴァーベが、この水彩で、「死に神」の主題を、さらに発展させたと述べています。
まとめ
《墓掘り人夫の死》は、死を、恐ろしい姿でなく、静かな、美しい訪問者として描いた作品です。雪と柳と墓石の白と、翼の黒との対比が、画面に、張りつめた静けさを与えています。墓を掘る者もまた、墓に入る者であるという、古い教訓が、冬の光のなかで、静かに語られています。
