《ルイ14世の肖像》とは|リゴーが描いた「見せるための脚」

《ルイ14世の肖像(仏:Portrait de Louis XIV en costume de sacre)》は、フランスの画家イアサント・リゴーが1701年に手がけた油彩画で、現在はパリのルーヴル美術館に所蔵されている。戴冠式の衣装をまとい、片脚をしなやかに突き出したこの姿は、太陽王ルイ14世の肖像として最も広く知られる一枚だ。もともとは孫への贈り物として描かれたはずが、あまりの出来映えに王自身が手放したくなくなったという逸話も残っている。今回はこの絵が生まれた経緯と、王の脚が語る意外な物語について見ていく。

目次

基本情報

項目内容
作者イアサント・リゴー(1659〜1743)
制作年1701年
技法・素材油彩・カンヴァス
サイズ約277×194cm
所蔵ルーヴル美術館(パリ)

一言でいうと

戴冠式の豪華な衣装をまとった老王が、まるでダンサーのように脚をひねって立つ。荘厳なはずの国王の肖像画に、意外なほど人間味と洒落っ気が同居している一枚。

制作背景

孫への贈り物のはずが

この絵の制作のきっかけは、1700年にスペイン王カルロス2世が亡くなったことにさかのぼる。後継をめぐる混乱のなか、ルイ14世の孫フェリペ5世がスペイン王位を継承することになり、彼は祖父に自分の肖像画を依頼した。その返礼として、ルイ14世は自らの肖像をリゴーに描かせ、フェリペ5世へ贈ることにした。

手放せなくなった原画

ところが完成した絵があまりに見事だったため、ルイ14世は当初の計画を翻し、この原画をヴェルサイユの玉座の間に留め置くことにした。代わりにリゴーへ同じ大きさの複製画を制作させ、そちらをスペインへ送ったという。結果としてこの絵は、フランス王室で最も有名な公式肖像画としての地位を確立することになった。

1500点を超えた肖像画家の代表作

リゴーは60年以上にわたる画業のなかで、1500点を超える肖像画を手がけたとされる肖像画の専門家だった。ルイ14世からは「筆頭画家」および王立絵画彫刻アカデミーの理事という称号を授かっている。この絵は1704年のサロンにも出品され、フランス革命後の1793年までルイ王室コレクションにとどまっていた。

見どころ

バレエの第4ポジションを思わせる立ち姿

王は片脚を前に出し、体重を斜めに傾けるという特徴的な姿勢で描かれている。この立ち方は、実はバレエの基本姿勢の一つ「第4ポジション」を思わせるもので、若き日のルイ14世が舞踏を愛し、宮廷バレエの舞台で「太陽王」として自ら踊っていたという事実と重なっている。

あえて見せられた脚

戴冠式のローブの下から伸びる白い脚は、当時62歳だった王のものとしては驚くほど若々しく描かれている。リゴーは写実性よりも、王としての威厳と洗練を優先したとされ、細部までこだわり抜いた靴の留め金の描写とあわせて、脚そのものが権威を演出する重要な要素として扱われている。

舞台幕のような赤いカーテン

画面上部を覆う豪奢な赤いカーテンは、劇場の緞帳を思わせる効果を狙って配置されている。荘厳な儀式の場というより、王という存在そのものを一つの「見世物」として演出する舞台装置の役割を果たしている。

玉座のそばに置かれた王冠と笏

画面左には、クッションの上に王冠と笏が置かれている。王自身が身にまとう衣装だけでなく、権力の象徴となる品々を周囲に配置することで、画面全体が国家そのものを表す図像として構成されている。

実際に見るには

本作はパリのルーヴル美術館に所蔵されている。同じ構図を踏襲した工房制作の複製画はヴェルサイユ宮殿にも所蔵されており、あわせて見比べることで、この肖像がいかに多くの複製を通じてフランス王室の「型」として広まっていったかをたどることができる。

よくある誤解

この絵はしばしば「荘厳なだけの国王の公式肖像」として片付けられがちだが、実際には脚の描き方一つをとっても、ルイ14世が若き日にバレエの舞台に立っていたという個人史が反映されている。単なる権威の誇示ではなく、王自身の趣味や身体性までも巧みに織り込んだ肖像画として見ることで、この絵の面白さがより見えてくる。

FAQ

Q. 《ルイ14世の肖像》はどこで見られますか?
パリのルーヴル美術館に所蔵されている。

Q. なぜこの絵は孫のスペイン王ではなくフランスに残ったのですか?
ルイ14世自身が出来映えを気に入り、原画をヴェルサイユに留め置き、代わりに複製画をスペインへ送ったためである。

Q. なぜ王は片脚を前に出すポーズをとっているのですか?
若き日にバレエを愛し、宮廷の舞台で自ら踊っていたルイ14世にちなみ、バレエの基本姿勢を思わせる立ち姿で描かれているとされる。

Q. リゴーはどんな画家でしたか?
生涯で1500点を超える肖像画を手がけ、ルイ14世から筆頭画家の称号を授かった、当代随一の肖像画家だった。

Q. この絵はいつ描かれましたか?
1701年に制作された。

まとめ

《ルイ14世の肖像》は、荘厳な戴冠式の衣装の下に、かつて舞台で踊っていた一人の男の身体性を忍ばせた肖像画だ。権威の象徴として描かれたはずのこの絵が、今もどこか人間味を感じさせるのは、リゴーがその脚の一本にまで王の individuality を宿らせたからかもしれない。

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