《すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢》(1876年)は、ピエール=オーギュスト・ルノワールが、パリの出版業者シャルパンティエの長女ジョルジェットを描いた肖像画で、東京のアーティゾン美術館が所蔵しています。大きな椅子に、足を組んで座った、青いドレスの少女が、こちらを見て、微笑んでいます。深い色の豪華な調度品のなかで、少女の肌とドレスが、明るく浮かび上がります。
基本情報
作者はピエール=オーギュスト・ルノワール(1841〜1919)、制作年は1876年です。技法はキャンバスに描いた油彩で、サイズは縦97.8×横70.8cm。東京のアーティゾン美術館(石橋財団)に所蔵されています。モデルのジョルジェットは、1872年7月30日生まれで、制作当時は4歳でした。
制作背景|シャルパンティエ家
パリで出版業を営んだジョルジュ・シャルパンティエは、ゾラやモーパッサンらの小説を出版する一方、自宅で文学サロンを開いていました。妻マルグリットが主催したそのサロンは、芸術家や政治家などが集まる、社交の場でした。1875年に、印象派の画家たちが開いた作品の売り立てで、夫妻は、ルノワールの作品を3点購入し、その後、両者は、親しく交流するようになりました。
アーティゾン美術館によれば、このジョルジェットの肖像画は、シャルパンティエ家の肖像画として、最初に依頼されたものです。ルノワールは、この家族の肖像を、いくつも描き、自分を、シャルパンティエ家の「お抱え画家」と呼んだこともあります(英語版ウィキペディアによる)。
この作品は、1877年の、第3回印象派展に、《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会》などとともに出品され、人気を集めました。その後、パリの上流階級から、肖像画の依頼が舞い込むようになり、ルノワールの生活が、安定していったとされます。
見どころ|少女の姿

画面の中央に、波打つ赤みがかった金髪と、前髪の少女が、椅子に座っています。頬は、ほんのり桃色で、青みがかった目は、こちらを見つめ、口元には、小さな微笑みが浮かんでいます。首には、赤い珊瑚のような玉をつないだ首飾りが下がり、胸元には、小さな飾りが、揺れています。
ドレスは、青を基調に、白いレースの襟と、茶色の帯のような飾りがついています。スカートの裾には、白いレースが波打ち、青いリボンが、肩のあたりに結ばれています。脚は、膝の上で組まれ、片手を膝の上に置き、もう片方の足は、青い靴下と、茶色の靴で、床に垂れています。
アーティゾン美術館は、「青色のドレスと靴下を身につけたジョルジェット」と解説しています。個人の解説記事は、子どもらしさを強調するために、あえて大人用の椅子に座らせ、大人びた座り方をさせたことが、「アンバランスの可愛らしさ」を生んでいると述べています。
見どころ|豪華な調度品
少女の座る椅子は、背もたれが高く、座面や縁には、金色の鋲が、整然と並んでいます。足もとには、赤、青、緑などの複雑な模様の絨毯が広がり、右上には、木の引き出し箪笥の上に、花瓶の花が見えます。背景の壁は、暗い紫と茶で塗られ、少女の肌の明るさを、いっそう引き立てています。
筆触分割
日本語版ウィキペディアによれば、この作品では、パレット上で絵の具を混ぜ合わせず、そのままキャンバスに載せていく「筆触分割」の技法が用いられています。
「シャルパンティエ夫人とその子どもたち」との関係
ジョルジェットは、1878年に描かれた、《シャルパンティエ夫人とその子どもたち》(ニューヨーク、メトロポリタン美術館)にも登場し、画面の左端に、愛犬に座る姿で描かれています。このとき、6歳でした。
まとめ
《すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢》は、印象派のルノワールが、肖像画家として歩み出す、重要な作品です。幼い少女の愛らしさと、大人の世界の豪華さが、一枚の画面で、柔らかく響き合っています。
