《サンスーシ宮殿でのフリードリヒ大王のフルートコンサート》(独:Flötenkonzert Friedrichs des Großen in Sanssouci)は、ドイツの画家アドルフ・フォン・メンツェルが1850年から1852年にかけて手がけた油彩画で、現在はベルリンの旧国立美術館に所蔵されています。フルート奏者としても知られたプロイセン王フリードリヒ大王が、宮廷音楽家たちとともに演奏に興じる様子を描いたこの作品は、実際の出来事からおよそ100年後、画家が徹底した史料研究をもとに想像力で再現した一枚です。この記事では、画面に描き込まれた実在の人物たちと、この絵からうかがえるフリードリヒ大王の人物像を見ていきます。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作者 | アドルフ・フォン・メンツェル(1815〜1905) |
| 制作年 | 1850〜1852年 |
| 技法・素材 | 油彩・カンヴァス |
| 所蔵 | 旧国立美術館(ベルリン) |
| 舞台 | サンスーシ宮殿(ポツダム) |
一言でいうと
《サンスーシ宮殿でのフリードリヒ大王のフルートコンサート》は、実在の出来事を目にしたわけではないメンツェルが、徹底した史料研究によって100年前の宮廷の一夜を克明に再現した作品です。登場人物のほぼ全員が、実際にフリードリヒ大王に仕えた実在の音楽家や廷臣たちだとされています。
制作背景
フリードリヒ大王の伝記との出会い
メンツェルは1839年から1842年にかけて、歴史家フランツ・クーグラーが著した『フリードリヒ大王伝』のために、実に400点にも及ぶ壮大な挿絵版画を制作しました。この仕事はメンツェルにとって決定的な転機となり、以後プロイセン宮廷を主題とした作品の依頼が増えていくことになります。本作は、こうしたフリードリヒ大王への深い関心の延長線上に生まれた代表作の一つです。
実在した音楽の夕べ
フリードリヒ大王は自らフルートを演奏し、作曲も手がけるほどの音楽愛好家でした。サンスーシ宮殿の広間で、高名な音楽家たちとともにアンサンブルを楽しむ夕べを度々催していたと伝えられています。メンツェルは先人たちの作品や史料を徹底的に研究したうえで本作を描いており、寸分たがわぬとまではいかなくとも、実際にこれに近い光景がサンスーシ宮殿で繰り広げられていたと考えられています。
見どころ

実在の人物たちが集う一室
画面中央でフルートを演奏するのがフリードリヒ大王です。その傍らには、王のフルートの師であったヨハン・ヨアヒム・クヴァンツや、ヴァイオリンを手にするフランツ・ベンダの姿があります。手前にはグスタフ・アドルフ・フォン・ゴッター、その後ろにはヤーコプ・フリードリヒ・フォン・ビールフェルト男爵、さらに天井を見上げるピエール=ルイ・モロー・ド・モーペルテュイの姿も描かれています。ソファには王の妹ヴィルヘルミーネ・フォン・バイロイトが腰かけ、その右手には侍女を伴ったプロイセンのアマーリエが、後方にはカール・ハインリヒ・グラウンが控えています。ソファに座る老婦人はカーマス伯爵夫人、その後ろにはエグモント・フォン・シャゾ、そしてチェンバロを弾いているのはカール・フィリップ・エマヌエル・バッハです。
この場に不在の王妃
この絵には、本来この場にいてもおかしくない一人の人物、王妃エリーザベト・クリスティーネの姿がありません。フリードリヒ大王は父の意向による結婚を好まず、王妃をサンスーシ宮殿に迎え入れることがなかったと伝えられています。父との複雑な確執が、こうした細部にも影を落としているのです。
温かみのある画面全体の空気
画面全体は明るい雰囲気に満ちており、フリードリヒ大王自身も楽しそうにフルートを吹いています。招待客たちの表情も実に多様で、どこかユーモラスな味わいがあります。史実に忠実であろうとしながらも、メンツェルがこの王に対して温かな眼差しを向けていたことがうかがえる一枚です。
実際に見るには
本作はドイツ・ベルリンの旧国立美術館に所蔵されています。描かれている広間はポツダムのサンスーシ宮殿に現存しており、実際に訪れることで、この絵に描かれた空間を今も目にすることができます。
よくある誤解
本作はしばしば「実際に画家が目撃した光景を写し取った絵」として受け取られがちですが、実際にはメンツェルが生まれるよりも前の出来事であり、徹底した史料研究に基づいて画家の想像力によって再構築された作品です。登場人物のほとんどが実在の人物であることは事実ですが、あくまで歴史考証を重ねた再現画であるという点を踏まえて鑑賞する必要があります。
FAQ
Q. 中央でフルートを演奏しているのは誰ですか?
プロイセン王フリードリヒ大王です。
Q. この絵に描かれた人物は実在の人物ですか?
ほぼ全員が、実際にフリードリヒ大王の宮廷に仕えた音楽家や廷臣たちだとされています。
Q. なぜ王妃の姿が描かれていないのですか?
フリードリヒ大王が父の意向による結婚を好まず、王妃をサンスーシ宮殿に迎え入れることがなかったためと考えられています。
Q. メンツェルはこの光景を実際に見たのですか?
見ていません。実際の出来事からおよそ100年後、史料研究に基づいて想像力で再現した作品です。
Q. 描かれている広間は今も見ることができますか?
はい。ポツダムのサンスーシ宮殿に現存しており、実際に訪れることができます。
まとめ
《サンスーシ宮殿でのフリードリヒ大王のフルートコンサート》は、メンツェルが徹底した歴史研究によって、実際には目にすることのできなかった100年前の宮廷の一夜を丹念に再構築した作品です。実在の人物たちの表情の一つひとつに、この王への画家の温かな眼差しが静かに込められています。
