リール美術館(フランス)に、着飾った2人の老女と、その背後に忍び寄る不気味な人影を描いた油彩画がある。《老女たち(西:Las Viejas、英:Time and the Old Women)》と題されたこの作品は、スペインの画家フランシスコ・デ・ゴヤが1810年から1812年頃に手がけたものだ。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作者 | フランシスコ・デ・ゴヤ(1746〜1828) |
| 制作年 | 1810〜1812年頃 |
| 技法・素材 | 油彩・カンヴァス |
| 所蔵 | リール美術館(フランス) |
「どうですか?」という皮肉な問い
画面には、宝飾品で飾り立てた老女が鏡を手にし、そこには「ケ・タル?(どうですか?)」という文字が刻まれている。彼女の傍らには、もう1人の老女が骸骨のような顔立ちであざけるように笑いかけている。その背後には、大きな箒を掲げた「時(クロノス)」を思わせる人影が忍び寄り、いままさに2人を払い除けようとしている。
見どころ

若さを装う老女の虚しさ
中央の女性は、若々しく見せようとするかのように華やかなドレスと宝飾品をまとっている。しかしその努力とは裏腹に、鏡に映る現実は容赦なく彼女自身に問いを突きつけている。
骸骨のような笑いを浮かべる隣の女性
もう1人の老女は、ほとんど骸骨と見紛うような顔立ちで、皮肉めいた笑みを浮かべている。この対比が、老いと死という主題を、より生々しく画面に刻み込んでいる。
箒を振りかざす「時」の擬人像
背後に描かれた翼を持つ人影は、時そのものの擬人化とされ、大きな箒を手に、いままさに2人を掃き捨てようとしている。この動きのある構図が、逃れようのない時の流れを象徴的に表現している。
実際に見るには
本作はフランス・リール美術館に所蔵されている。ゴヤが晩年に手がけた、人間の愚かさや老い、死をめぐる一連の作品群とあわせて見ることで、彼がこの時期どれほど容赦のない視線で人間を見つめ続けていたかがうかがえる。
FAQ
Q. 《老女たち》はどこで見られますか?
フランス・リール美術館に所蔵されている。
Q. 鏡に書かれた文字にはどんな意味がありますか?
「どうですか?」という問いかけで、若さを装う老女への皮肉として機能している。
Q. 背後の人影は誰ですか?
時(クロノス)を擬人化した存在とされ、老女たちを掃き捨てようとしている。
Q. この絵はどんな主題を扱っていますか?
老いと虚栄、そして時の流れの残酷さを主題とした風刺画である。
まとめ
《老女たち》は、若さへの執着がいかに虚しいものであるかを、容赦のない筆致で突きつけた1枚だ。鏡に刻まれた「どうですか?」という問いを見つめていると、この絵が200年以上前に描かれたことを忘れてしまいそうになる。
