グスタフ・クリムト《ダナエ》とは|黄金の雨に包まれる、眠る王女

《ダナエ》(1907〜08年)は、ウィーンの画家グスタフ・クリムトが、ギリシャ神話の王女ダナエを描いた油彩画です。赤い髪の若い女性が、体を丸めて、目を閉じ、頭を傾けています。画面の左側には、金色の粒が舞い、右側では、金の円形の模様が、濃い紫色のヴェールに散りばめられています。クリムトが、金箔を多用した「黄金様式」の時期に描いた、小さな作品の一つで、個人が所蔵しています。

基本情報

作者はグスタフ・クリムト(1862〜1918)、制作年は、1907〜08年(1907年とする資料もあります)です。技法はキャンバスに描いた油彩で、サイズは、縦77×横83cmです。画面の右下には、「GUSTAV KLIMT」と、署名が見えます。原題は、「Danaë」です。

所蔵は、個人蔵です。英語版ウィキペディアによれば、もとは、ウィーンのヴュルトレ画廊(1995年に閉廊)にあり、のちに、新聞『クローネン・ツァイトゥング』の発行者ハンス・ディヒャント(1921〜2010)のコレクションとなり、現在は、彼の三人の子どもが所有しています。

神話の主題

ダナエは、アルゴスの王アクリシオスの娘です。「娘の産む子に殺される」という神託を恐れた王は、ダナエを、青銅の塔に閉じ込めました。しかし、主神ゼウスは、黄金の雨に姿を変えて、塔に入り、ダナエとの間に、英雄ペルセウスが生まれました(オウィディウス『変身物語』などに記された伝承)。

この主題は、ティツィアーノ、コレッジョ、レンブラントなど、多くの画家が、描いてきました。多くの作品では、ダナエは、横たわり、天から降る黄金の雨や、金貨を、静かに受けとめる姿で、描かれています。

見どころ|画面の構成

画面は、ほぼ正方形で、ダナエの体が、画面いっぱいに、斜めに広がっています。頭の上は、画面の外へ切れ、足は、描かれていません。赤みの強い、波打つ髪が、顔の右側から、肩へ流れ、閉じたまぶたと、赤い唇の顔は、腕に埋まるように、傾いています。片手は、胸のあたりに、軽く添えられています。

体は、薄い淡褐色で、ほとんど、凹凸を描かずに、柔らかく塗られています。その左側には、金色の絵の具が、細かい粒のように、飛び散り、渦を巻くように、集まっています。これが、黄金の雨で、ゼウスの象徴です。画面の右側には、深い紫と、えんじ色の、半透明のヴェールが、広がり、その上に、渦巻き模様を持つ、金の円形の飾りが、並んでいます。ウィキペディアは、この紫のヴェールが、ダナエの王家の血統を指すと解釈しています。

背景は、暗い褐色と黒で、塗りつぶされ、人物と金の飾りだけが、浮かび上がります。

見方

英語版ウィキペディアは、クリムトの《ダナエ》を、神話の主題を、エロティックに表現した作品とし、同時期の《医学》(1900〜07年)や、《ウォーター・スネークス I》(1904〜07年)と、近い様式だと述べています。日本語のウェブ記事の一つは、クリムトが、ダナエを、受け身の王女ではなく、歓喜の主体として描いたと解釈しています。これは、一つの見方で、定説ではありません。

展示

フランスの美術複製サイト(ミュゼオ)は、この作品が、1908年に、ウィーンの「クンストシャウ」で、初めて展示され、賞賛と論争を呼んだと述べています(原典は、確認できていません)。

まとめ

《ダナエ》は、クリムトが、神話の場面を、金と色の粒と、丸まった体の曲線に、すっかり包み込んだ作品です。人物の表情や、体の姿勢と、装飾の模様が、ひとつながりになり、観る者を、画面の内部へと引き込みます。

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