アムリタ・シェール=ギル《花嫁》とは|赤いヴェールの下で、うつむいて座る若い女

《花嫁》(1940年)は、アムリタ・シェール=ギルが、晩年に描いた、赤いヴェールをかぶった若い花嫁の肖像画です。緑がかった黄土色の背景の前に、濃い赤の衣装の女が座り、両手を膝の上で組んで、静かに、視線を落としています。ヴェールの金の模様と、頭の上の金の飾りが、赤と緑の世界に、ほのかな光を添えています。

この記事の作品について

添付の図は、シェール=ギルの《花嫁》(1940年)と判断して書いています。同じ画家には、《花嫁の化粧》(1937年、インド国立近代美術館)や、《少女の花嫁(Child Wife/Child Bride)》(1936年)など、花嫁を題材にした作品が、他にもあります。図版の出典と、題名を、ご確認ください(詳しくは、末尾の注記)。

基本情報

作者はアムリタ・シェール=ギル(1913〜1941)、制作年は1940年です。技法はキャンバスに描いた油彩で、サイズは70×95.5cmと記録されています。インド国立近代美術館(NGMA、ニューデリー)のコレクションの作品として、Googleアーツ&カルチャーに掲載されています。原題は「Bride」です。

制作背景|晩年の「赤」

NGMAの解説は、シェール=ギルが、1930年代半ばに、インドの伝統的な美術に新しい目を向けたこと、アジャンタやエローラの石窟寺院と、南インドを旅したことで、彼女の視覚言語が劇的に変化したことを述べています。パレットは、強い赤、黄土、茶、黄、緑で飽和し、人物の表現は、新しい視覚的な現実を表すようになりました。

NGMAは、この時期の作品の多くに、官能的な赤が目立つこと、女性像が、受け身の官能性を漂わせる一方で、驚くほどの無垢さを備えていることを述べています。また、シェール=ギルが、人生に情熱を持ちながら、深い憂愁を内に抱え、それが、被写体の物思わしげな顔と、けだるい姿勢に表れていると解説しています。

見どころ|赤いヴェールの花嫁

画面の中央では、若い女が、体をわずかに傾けて座っています。頭からは、細かな金の花の模様が入った、赤い薄布のヴェールが、肩から体を包み、三角形の大きな輪郭を作っています。髪は、黒く、中央で分けられ、頭の上には、小さな円錐形の金の飾りが、光っています。

顔は、黄土色と橙色の肌で、目は、黒く、大きく、伏せ気味に、やや下を見ています。口は、赤く、固く結ばれ、鼻は、長く、細い線で描かれています。耳には、金の飾りが見えます。首から肩へは、ヴェールと同じ赤の衣装が、胸のあたりまで、ゆったりと流れ、その上には、小さな花の模様が、点々と散っています。

膝の上では、両手が、静かに組まれ、手首には、黒と金の太い腕輪が見えます。指先は、赤く染められているように見えます。

見どころ|緑の背景

背景は、緑がかった黄土色で、筆の跡を残した、むらのある色面です。赤い衣装と、緑の背景は、補色の関係にあり、人物の赤を、いっそう強く際立たせます。背景には、細部や空間の描写がなく、人物だけが、画面に浮かんでいます。

展覧会

NGMAの記録によると、この作品は、「アムリタ・シェール=ギル:情熱の探求」展(NGMA)、生誕100年記念展(パリのユネスコ)、「アムリタ・シェール=ギル:20世紀の芸術家の家族」展(ミュンヘン、2006年10月〜2007年1月)、「アムリタ・シェール=ギル」展(ロンドンのテート・モダン、2007年2月18日〜4月22日)などに出品されました。

まとめ

《花嫁》は、赤いヴェールの下で、うつむく若い女を、緑の背景に置いた作品です。祝福されるはずの花嫁の、静かな憂いと、少しのあどけなさ。シェール=ギルが、晩年まで描き続けた、インドの女性たちへのまなざしが、この一枚にも、よく表れています。

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