《人生はこうしたものである(Such Is Life)》(1907年)は、イギリスの画家ジョン・バイアム・リストン・ショーによる油彩画で、イギリス・リーズ・アート・ギャラリーが所蔵する作品です。パントマイム劇の一場面で、道化芝居(ハーレクイネード)の登場人物アルルカンがコロンビーヌに口づけをする、一見華やかで甘やかな光景でありながら、その背後に潜む一人の警官の存在が、見る者に不穏な違和感を残す、謎めいた寓意画です。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作者 | ジョン・バイアム・リストン・ショー(1872〜1919) |
| 制作年 | 1907年 |
| 技法・素材 | 油彩・カンヴァス |
| 所蔵 | リーズ・アート・ギャラリー(イギリス・リーズ) |
| 主題 | パントマイム劇「ハーレクイネード」の一場面 |
| 発表 | 1907年ロイヤル・アカデミー展 |
一言でいうと
《人生はこうしたものである》は、パントマイム劇の道化芝居の中で、アルルカンがコロンビーヌに口づけをするという、一見華やかで幸福な瞬間を描きながら、その傍らに潜む一人の警官と、壁に貼られた「スキャンダル」の文字によって、恋愛という祝祭の裏に潜む不穏さを暗示する、バイアム・ショーらしい「問題画」の一枚である。
制作背景
ジョン・バイアム・リストン・ショー(通称バイアム・ショー)は、イギリス領インドのマドラスで生まれ、セント・ジョンズ・ウッド美術学校とロイヤル・アカデミー・スクールで学んだ画家です。1899年には同じく画家であったエヴリン・キャロライン・ユーニス・パイク=ノットと結婚しています。彼は明快な物語を持つ絵画を手がける一方で、しばしば解釈の定まらない、謎を秘めた「問題画」を好んで制作したことでも知られています。
この絵の舞台は、イギリスのクリスマス・パントマイムに欠かせない伝統的な演目「ハーレクイネード(道化芝居)」です。道化役アルルカン(ハーレクイン)がヒロインのコロンビーヌに口づけをするという、恋の成就を描いた喜劇的な場面でありながら、当時の批評はこの絵を繰り返し「寓意画」と呼びながらも、その具体的な意味については誰も明確に説明できずにいました。
見どころ

構図:画面右側では、桃色のバレエ衣装をまとったコロンビーヌが、菱形模様の衣装を着たアルルカンと口づけを交わしています。画面左側では、白塗りの顔をした道化師と、縞模様の靴下をはいたパンタローンが、この様子を見守っています。一方は笑い、もう一方は目を覆っており、恋愛という出来事に対する、相反する二つの反応を象徴しているとも解釈できます。
不穏な要素:画面奥、影に紛れるように一人の警官が佇んでいます。彼だけがこの祝祭的な雰囲気にまったくなじんでおらず、周囲から浮いた存在として描かれています。さらに壁には「スキャンダル」という文字を含むポスターが貼られ、テーブルの上には海豚(いるか)にまたがる少年の小さな彫像が置かれています。これらの要素が何を意味するのかは、当時の評からも今日に至るまで、明確な答えが出されていません。
評価の分裂:この絵は1907年にロイヤル・アカデミーで発表された際、当時のイギリスの新聞が「寓意画」であると繰り返し評しながらも、その具体的な意味を説明することはできませんでした。同年の『デイリー・ミラー』紙は、ロイヤル・アカデミー展でもっとも印象に残った作品の一つとしてこの絵を紹介した際、キングスウェイ近くで似顔絵を描いていた「舗道の画家」アーネスト・ウォーカー氏がこの絵をとりわけ気に入っていたと報じています。この逸話を聞いたバイアム・ショー自身は、「どこかで評価されているのはうれしいことだ」と、朗らかに語ったと伝えられています。
よくある誤解
誤解①「この絵は単なる幸福な恋の場面を描いた喜劇的な作品である」→ 実際は不穏な要素を含んだ『問題画』である
アルルカンとコロンビーヌの口づけという主題から、単純に幸福な恋愛の成就を描いた作品だと思われがちですが、実際にはこの絵には、影に潜む警官や「スキャンダル」の文字を含むポスターなど、祝祭的な雰囲気とは相容れない不穏な要素が意図的に組み込まれており、当時の批評家たちもこれを単純な喜劇としてではなく「寓意画」として扱っていました。
誤解②「この絵はロイヤル・アカデミーの上流の批評家たちにのみ評価された」→ 実際は市井の似顔絵描きにも愛された記録が残っている
権威ある展覧会に出品された作品であることから、上流階級の批評家たちだけがこの絵を評価したと思われがちですが、実際には当時の新聞記事には、ロンドンの路上で似顔絵を描いていた「舗道の画家」がこの絵をとりわけ気に入っていたという逸話が残されており、バイアム・ショー自身もこのことを喜んで受け止めていました。
FAQ
Q. 《人生はこうしたものである》とはどんな作品ですか?
A. バイアム・ショーが1907年に描いた油彩画で、パントマイム劇の道化芝居の一場面として、アルルカンがコロンビーヌに口づけをする様子を、道化師やパンタローン、そして一人の警官とともに描いています。リーズ・アート・ギャラリーが所蔵しています。
Q. なぜ警官が描かれているのですか?
A. 明確な意味は今日まで特定されていませんが、祝祭的な恋の場面にまったくなじまない、不穏で象徴的な存在として配置されていると考えられています。
Q. なぜこの絵は「問題画」と呼ばれるのですか?
A. 一見単純な恋の場面を描いていながら、警官や「スキャンダル」の文字、海豚にまたがる少年の彫像など、解釈の定まらない謎めいた要素が数多く含まれているためです。
Q. 《人生はこうしたものである》はどこで見られますか?
A. イギリス・リーズのリーズ・アート・ギャラリーが所蔵しています。
まとめ
《人生はこうしたものである》は、パントマイム劇の道化芝居の中で、アルルカンがコロンビーヌに口づけをするという、一見華やかで幸福な瞬間を描きながら、その傍らに潜む一人の警官と、壁に貼られた「スキャンダル」の文字によって、恋愛という祝祭の裏に潜む不穏さを暗示する、バイアム・ショーらしい「問題画」の一枚です。誰が誰を裏切り、警官が何のために立っているのか。バイアム・ショー自身がその答えを残さなかった以上、この謎はこれからも解かれずに終わるのでしょう。
